動画の台本づくりは、白紙から始めるのがもっとも時間のかかる部分です。ここにAIを使うと、着手までの時間が大きく減ります。

ただし、出てきた文章をそのまま使うのは避けてください。AIは自然な文章を書きますが、その内容が自社の事実と一致しているかどうかは判断していません。実際には提供していない機能や、根拠のない数字が混ざったまま、読める文章として出てきます。動画は資料と違い、公開後に1行だけ直すことができません。

この記事では、AIに渡す情報、書かせる手順、必ず直す3か所、そしてAIに頼らないほうがいい場面を整理します。

AIに動画の台本を書かせて大丈夫?

叩き台としてなら有効です。完成原稿としては使えません。

AIが得意なこと・苦手なことを分けると、次のようになります。

AIが得意AIが苦手
構成一般的な型に沿って並べる自社の事情に合わせて型を崩す
事実それらしく書く正しいかどうかの判断
言い回し候補を大量に出すどれが自社らしいかの選択
尺の調整指定した文字数に収める削ってよい情報の見極め
冒頭無難な導入を書く視聴者の状況を言い当てる

この表の右側が、そのまま人の仕事になります。 AIは「よくある形」を素早く出せますが、その動画がなぜ他社の動画と違うのかは説明できません。

実務での使い方としては、AIに3案書かせて、そこから使える部分を拾うのが現実的です。1案を磨かせるより、複数の切り口を出させて選ぶほうが、AIの強みと合っています。

AI全般の工程別の線引きはAI動画制作で任せていい工程・ダメな工程で整理しています。

どんな手順で書かせる?

渡す情報の質で、出てくる原稿の質がほぼ決まります。 次の5つの手順で進めてください。

  1. 前提を5点渡す:誰に見せるか/どこで見せるか/尺/伝えたいこと3つ/使ってよい事実
  2. 構成だけを先に出させる:いきなり台本を書かせず、見出しレベルの構成を3案出させます
  3. 構成を選んで、順番を自分で直す:ここは人が決めます。並び順が動画の伝わり方を決めます
  4. 選んだ構成で台本を書かせる:ナレーション原稿とテロップ案を分けて出させます
  5. 事実確認と書き換えをする:後述の3か所を直します

1番目の「使ってよい事実」がもっとも重要です。 自社のパンフレットや提案資料から抜き出した事実を渡し、それ以外の情報を足さないよう明記してください。これを指定しないと、AIは一般論で穴を埋めます。

2番目で構成だけ先に出させるのは、修正の手間を減らすためです。 台本まで書かせてから構成を変えると、全部書き直しになります。構成なら数行なので、比べるのも直すのも早く済みます。

渡す前提の書き方の例を挙げます。

  • 悪い例:「会社紹介動画の台本を書いて」
  • 良い例:「BtoBの製造業向けに、90秒の会社紹介動画の台本を書いてください。見る人は初めて当社を知る取引先の購買担当です。展示会のブースで音なしで流します。伝えたいことは、1)自社で一貫生産していること、2)試作から量産まで対応できること、3)全国に3拠点あること。以下の資料に書かれている事実だけを使い、それ以外の情報は書かないでください」

この差が、そのまま原稿の使える度合いになります。

AIの台本で必ず直すのはどこ?

事実関係、冒頭の一文、社内でしか通じない言い回しの3か所です。

1. 事実関係

自社の資料と1つずつ突き合わせます。とくに次が混ざりやすい部分です。

  • 提供していないサービス・機能
  • 「業界初」「国内トップクラス」といった裏付けのない表現
  • 出どころの分からない数字(シェア、導入社数、削減率)
  • 実在しない受賞歴・認証

「〜%の企業が」といった数字が出てきたら、原則として削ってください。 出典を確認できない数字を動画に入れると、後から問われたときに答えられません。公的統計や業界団体の調査など、出典を明記できるものだけを残します。

2. 冒頭の一文

AIが書く導入は、たいてい「近年、〇〇が求められています」のような一般論から始まります。この一文には、視聴者にとって新しい情報がありません。

冒頭は、視聴者の状況を言い当てる一文に書き換えてください。「月末になると、経理の担当者だけが残っていませんか」のように、見ている人が自分のことだと感じる文にします。ここは人が書いたほうが早く、質も上がります。

3. 社内でしか通じない言い回し

AIは渡した資料の言葉をそのまま使うため、自社の中でしか通じない略語や独自の呼び方が残ります。視聴者が業界の外の人なら、すべて言い換えてください。

判断に迷ったら、その業界で働いていない人に読んでもらうのがもっとも確実です。読んで引っかかった箇所が、そのまま直す箇所になります。

この3か所を直したうえで、最後に声に出して読んでください。 ナレーション原稿は、目で読めても口で読みにくい文が混ざります。読点の位置、1文の長さ、同じ音の連続。声に出すと数分で分かります。

AIに頼らないほうがいい場面は?

次の3つは、AIから始めないほうが結果的に早く終わります。

  1. 社員の言葉をそのまま使う動画:インタビューが主役の採用動画や、お客様の声。ここは本人の言葉に価値があります
  2. 自社の強みを言語化する段階:まだ「何を売りにするか」が決まっていない場合、AIに書かせると一般論に寄ります。先に人で決めてください
  3. 決裁者の関心が読めていない場合:誰の判断で通るかが分かっていない動画は、原稿を何度書き直しても通りません

とくに2番目は、AIを使う前の段階の問題です。 台本が書けないのは文章力の問題ではなく、伝えたいことが決まっていないことが原因である場合がほとんどです。この状態でAIを使うと、それらしい文章が出てくる分、決まっていないことに気づきにくくなります。

アニメーション動画の工程でAIをどこまで使えるかはアニメーション動画にAIはどこまで使える?工程別の線引きにまとめています。

まとめ

動画の台本づくりにAIを使うのは、叩き台としてなら有効です。渡すのは、誰に見せるか・どこで見せるか・尺・伝えたいこと3つ・使ってよい事実の5点で、とくに最後の1つを指定しないとそれらしい嘘が混ざります。手順は、構成を3案出させ、順番を人が決め、そのうえで台本を書かせる形が効率的です。出てきた原稿は、事実関係・冒頭の一文・社内でしか通じない言い回しの3か所を必ず直してください。伝えたいことがまだ決まっていない段階では、AIから始めないほうが早く終わります。

ムービルドでは、AIを使う工程と人が担う工程を分けて設計しています。構成の設計とお客様の事実確認は人が担当し、下書きや差し替えの効率化にAIを使う形です。窓口はディレクター1名に一本化しているため、お客様が複数の制作者とそれぞれやり取りする必要はありません。最低料金は編集のみで10万円〜、撮影&編集で15万円〜です。ここからいくらになるかは内容次第です。

台本を自社で用意すると企画費を抑えられます。書き方から一緒に整理したい場合も、無料相談でご相談ください。

よくある質問

動画の台本をAIに書かせても大丈夫ですか?

叩き台としてなら有効です。構成の抜けを洗い出したり、言い回しの候補を並べたりする用途では時間が大きく短縮できます。ただし、そのまま使うのは避けてください。自社が提供していない内容や、根拠のない数字が混ざることがあるためです。

AIに台本を書かせるとき、何を渡せばいいですか?

誰に見せる動画か、どこで見せるか、尺、伝えたいこと3つ、使ってよい事実の5点です。とくに5点目が重要で、自社の資料から抜き出した事実だけを使うよう指定しないと、それらしい嘘が混ざります。

AIが書いた台本のどこを必ず直すべきですか?

事実関係、冒頭の一文、社内でしか通じない言い回しの3か所です。事実は自社の資料と突き合わせ、冒頭は視聴者の状況を言い当てる文に書き換え、専門用語は視聴者に合わせて言い換えます。

動画制作のご相談は無料です。目的や予算をうかがい、最適な進め方をご提案します。

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監修:立石勝輝(ネクティ株式会社代表)

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